2006-09-20

暗黒物質の話

世の中、目に見えるものだけがすべてとは限りません。でも、知らず知らずのうちに、ほとんどのものは目に見えるはずだという先入観を持ってしまっています。

一見関係のない話で始めてしまいましたが、銀河の話の続きです。1つの例として、渦巻銀河の回転速度について触れておきましょう。

渦巻銀河は約2億5000万年の周期で回転しています。かなり遅いように思えますが、銀河の直径は10万光年ほどありますので、銀河の外周部では、なんと時速135万6500kmにもなります(計算間違えてたらごめんなさい)。

300000x60x60x24x365x100000x3.14/(250000000x365x24)

=1356480 (km/h)

さて、問題はその速さではなく、中心部から外周部にかけての回転速度の変化のしかたで、ケプラーの法則によれば、外周部では回転速度は急激に遅くなっていくはずなんです。外側に何もなければ

ところがです。驚いたことに、銀河の回転速度は中心から外側にいくほど速くなっていき、一定の半径より外側では回転速度が減少せず、ほぼ一定の値を保っているのです。この現象を説明するには、ケプラーの法則(ひいては万有引力の法則)を疑うか、銀河全体を大きく包む何らかの物質が大量に存在しなければなりません。

銀河のレベルで万有引力の法則を疑うわけにはいきませんから、当然後者であろうと予測されます。

そうすると、その正体はなんなんだという話になって、それを目に見えない物質という意味で、暗黒物質(Dark Matter )と呼んでいるのです。

銀河は光り輝く恒星だけで成り立っているわけではなく、地球のような暗い惑星や近くに恒星のないガス雲などもあるわけですが、暗黒物質の量はそれだけでは到底足りません。

暗黒物質の質量は、なんと観測されている物質の100倍近いと予測されています。宇宙全体の質量の97%ほどが暗黒物質だというのです。言い方を変えると、我々は宇宙のたった3%しか知らないのです!

はるか遠くのクェーサーを発見し、宇宙背景放射(CBR)でビッグバンの名残りも見つけ、宇宙のほとんどを理解したと思っていた天文学者は愕然としたことでしょう。

暗黒物質の正体は、今でも謎のままです。有力な候補として、ニュートリノがあります。ニュートリノの性質はまだよくつかめておらず、質量があるかないかもはっきりしていませんでした。ニュートリノは大量に存在しているので、もしほんのわずかでも質量をもつとしたら、暗黒物質の大部分を説明できるかも知れません。しかも、最近の実験では、質量をもつことが確実視されています。

それでも、暗黒物質のすべてを説明できるとは考えられません。未発見の素粒子の可能性もあります。また、もっと根本的に万有引力の法則が間違っているのかも知れません。さらにいえば、我々の知らない第5の力が働いているのかも知れないのです。