2006-09-06

素粒子の話

物質の最小単位(素粒子)とは何でしょう?

私たちの身の回りにあるものはすべて、陽子と中性子から成る原子核のまわりにいくつかの電子が取り囲んだ原子やイオンから出来ています。そうすると、あらゆる物質は陽子・中性子・電子だけで出来ているのでしょうか?

電子はある意味で最小単位といってもいいでしょう。しかし、陽子や中性子については、必ずしも最小単位とはいえません。また、陽子や中性子の仲間は、現在では他にもたくさん見つかっています。標準理論といわれる枠組の中では、これらは6種類のクォークという粒子の組合せで説明されます。

クォークの種類
電荷
第1世代
第2世代
第3世代
2/3eupクォーク(u)charmクォーク(c)topクォーク(t)
-1/3edownクォーク(d)strangeクォーク(s)bottomクォーク(d)

さて、この表にある2/3eや-1/3eの電荷とは何でしょうか?

電荷には最小単位があり、素電荷と呼ばれます。素電荷は、電子の電気量と同じ大きさをもつ電荷で、これ以上小さい単位のものは見つかっていません。ここで、eで表したのは素電荷の電気量のことです。しかし、最小単位だと書きましたよね。なのに、クォークはその2/3倍とか1/3倍とか中途半端な値の電荷をもっています。一見、矛盾するようですが、そうではありません。

クォークを単独で取り出すことは出来ないのです。クォークは2つまたは3つの組合せを作り、全体としての電気量が素電荷の整数倍となる形でしか、存在できないと考えられています。

3つ組で整数になるのはわかると思いますが、2/3と-1/3のみの組合せを考えたときに2つで整数になるのでしょうか?

実は、クォークには反対の符号をもつ反粒子が存在しており、それを考慮すれば、2/3+1/3=1などの整数値をとり得るのです。

最初にクォークという粒子と書きましたが、もちろん量子力学で扱わなくてはならないスケールの話ですから、正確には波と粒子の両方の性質をもった量子と書くべきでしょう。そして、量子力学的には、観測できない構造は物理量として定義できないので、クォークが単体で取り出せない以上、わかりやすくモデル化したにすぎません。

ところで、上の表には、電子が含まれていません。電子は、レプトンと呼ばれる素粒子の一種で、他にも同じような性質をもっているμ粒子(ミューオン)τ粒子(タウオン)という仲間がいます。

レプトンの種類
電荷
第1世代
第2世代
第3世代
-e電子(e)μ粒子(μ)τ粒子(τ)
0電子ニュートリノμニュートリノτニュートリノ

この表は、クォークの表に非常によく似ていますね。upクォーク、downクォーク、電子、電子ニュートリノを1組と考えると、それと同じような組合せが3世代連なっているように見えます。自然な発想として、第4世代はないのかという疑問が湧いてきますが、この問題はすでにほぼ決着がついており、第3世代までで終了と考えられています。

クォークがなぜ3つ組や2つ組でしか存在できないのか、またニュートリノって何なの?など、いろいろと疑問点が残りますが、その辺についてはまた別な機会に説明しましょう。