2006-09-03

時間の話

未来のことを覚えている人はいません。また、過去の出来事を心待ちにする人もいません。時間には前後関係があり、過去から現在へ、現在から未来へと続いていくものだからです。原因があって結果があるのです。このように時間の向きを定めているルールを因果律といいます。

それでは、なぜ時間にはこのような一方通行の性質があるのでしょうか?

実をいうと、物理法則の大部分は時間を逆転させても成り立ちます(時間反転の対称性)。時間の方向を定めているものは、たった3つの理由しかないのです。まず第一に、熱は温かいものから冷たいものへという方向にしか伝わらないということ(エントロピー増大の法則)、第二に、人間の思考の方向性が未来へ向いている、つまり、過去のことは覚えているけど未来のことはわからないということ(思考の一方向性)です。不思議なのは、最後の一つで、これだけはあまりにも具体的なのです。

第三の理由は、中性K中間子が崩壊する方向が未来だということです。専門的には、パリティの非保存などというんですが、このタイプの反応だけが多くの物理法則の中で、時間反転に対して対称になっていないのです。

アインシュタインの相対性理論では、時間を3次元空間の3つの座標と同等のものとして扱っています。しかし、その中で因果律を破るような現象は扱っていないように思います。ホーキングは一時期、過去への旅を可能だとしていたものの、その後、時間順序保護仮説(確かそんなネーミングだったと思いますが)を提唱して、因果律を肯定しました。

結局、時間の方向を決めているのは、自分自身の頭の中だけなのかも知れません。